kando-kigyo-labのブログ

探求すること大好き コミュニケーションやや苦手 論理的 普段はあまり話さないが、興味のある話はひたすら長い 自分の分野に強い誇りあり! チームは一人では成し遂げられない大きな仕事をする際には必須です。だからこそ、研究肌の社員さんと共に強いチームを作り上げることは会社の未来にとても重要な課題です。

研究肌リーダー鈴木課長のチームビルド成功への道のり No.6

今から数時間前に、このセミナールームでお話されていた鈴木課長

尊敬とは何か?どのような行動指針を持って日々を過ごす必要があるのか?ということを互いに意見を出し合って話しておりました。
白熱した議論と気付きの多い時間が過ぎ、あっという間の一時間でしたが、日々これ行動することの大切さを改めて考える一時間となりました。

そのお話は、昨日のブログで詳しく書いておりますので、そちらをご覧くださいませ
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詳しくは7月7日のブログはこちら

kando-kigyo-lab.hatenablog.jp

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さて、突然となりましたが、

このお話は大手医薬品メーカーの研究開発チームを率いる鈴木課長のお話です。

鈴木課長は3度の飯より研究が好きな研究者からマネジメントという立場を命じられ、チームビルドが上手くいかずに奮闘中です。

そんな鈴木課長と私の出会いは、私が鈴木課長の会社でコーチングコミュニケーションの年間シリーズ研修で登壇させていただいた、セミナーの初日でした。

私は2週に一度そちらの会社にお邪魔し、1回3時間程度のコーチングを人生やチーム内でのコミュニケーションに活かすという講義を年間12回×2クラス AクラスとBクラスというスケジュールで行っておりました。

鈴木課長は初回の講義の後、全員が帰られ誰もいなくなったセミナールームにこっそりお戻りになり、ご自身のお悩みをお話いただいたのが初めての出会いです。

その時はマネジメント職への不満や不安、チームメンバーとの関係性に悩んでいらっしゃるということを、お話されて以来、セミナー後のお時間に小一時間お話することが暗黙の了解となりつつあります。

さて、今日のお話はBクラスで一番内気だった渡辺さんについてお話しようと思います。それでは、お話を進めて参りましょう

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講義の時はいつも、多くの受講生の方々とアイコンタクトを取りながら、出来るだけ講義を進めています。目が合うと嫌そうに目をそらす方もおられますが(笑)これは、私が講義で大切にしていることです。

一対多の講義 一対一の関係でお話をお届けしたいという想いからです。

講義の内容はこんなお話からスタートしました

人は環境の生き物ですから、「朱に交われば赤くなる」と申しますか、良くも悪くも環境に思考が依存します。だとしたら、良い環境に身をおくことで自分がなりたいと思う憧れの状態を常に頭にインプット出来る環境にいる方が人生に10倍以上の良い変化をもたらします。

これは、よく皆さんも耳にしたことがあるかもしれませんね。

【思考が変われば言葉が変わり、言葉が変わると行動が変わり、行動が変わると習慣が変わり、習慣が変わると性格が変わり、性格が変わると運命が変わる】

これはマザーテレサを始め、歴史に名を遺す、著名人が口をそろえて仰ることですよね。そしてこの考え方を書いた何冊もの本が出版されております。

 

しかし、知っていたとしても上手に実行できる人と、そうでない人がいるとしたらどんなことが考えられると思いますか?
すると、何名かが手を挙げてくださいました。

「意思が弱い」

「本気じゃない」

「頭が、大好きなアニメで満たされている」

「すぐ忘れる」

などなど、笑いありの珍解答が飛び出す中、私は話を進めました。

「皆さん、どれも正解だと思います。その通りですね(*^-^*)私からも今日お伝えしたい内容もシェアしても良いですか?」

すると各々が私に向かって うんうん と首を縦に振ってくださいました。私はそれを確認し、ゆっくりと話し始めました。

「私は、この思考の下にセルフイメージという土台があると考えています。このセルフイメージとは簡単にお話すると自分が自分をどのようにイメージしているのか?ということです。」

私は

【自分が自分を】

という部分を敢えて強調してお伝えし、続きを進めました

「つまり、この部分は先ほど 自分を研鑽する場所に身を置くことが人生をより良くする手助けとなるとお伝えしましたが、この土台を支える部分は自分の中で完結する話です。自分が自分に自信を持つことも、自分が自分をどのように大切にするか?ということも自分が決めて良いということです。自由です。」

 

すると、皆さんの目が少し真剣になり、セミナールームの空気感が少し引き締まるのを感じました。それ肌で感じながら、私は話を進めます。

「このセルフイメージというのは3つの項目から出来ていると考えています。その3つとは、【自己受容】【自己信頼】【自己尊重】です。中でも一番下に位置する自己受容という部分が上の二つの基本項目となる土台の部分ですが、以外にも日本人は自己受容感の低い人が多いようです。

まずは、一つ一つ説明しますね(^^♪

 

【自己受容】

これは、ありのままの自分を受けて入れているか?ということです。自分自身の好きな部分もあまり好きではない部分も含め、理想の自分とは食い違っていたとしても、そのままを受入れていること。と定義されています。

皆さんは自己肯定という言葉を耳にしたことはありますでしょうか?この自己受容は自己肯定とは少し異なるということです。

自己肯定とは悪い部分があったとしても良いと解釈をするということです。言い換えるとポジティブ思考という感じでしょうか?これは、物事に対する捉え方としては良い効果を生むのですが、こと自己を肯定することが強すぎる方は、脳の中で今の自分が理想の自分であると認識されます。すると自分の成長を止めかねませんので注意が必要です。

一方つい自己否定してしまうという方はいらっしゃいませんか?」

 

すると何人かの手が小さくちらほらと上がりました。その中には、いつも目立たないながらもシェアタイムなどに相手のお話を一生懸命 聴かれている、物静かで柔らかい物腰の20代前半頃の女性がおられました。白い肌が透けるようでどこか守ってあげたくなるような雰囲気のその女性は、積極的に参加していないというよりは出来ないというイメージがある女性でした。私は、その方と軽く目を合わせ話を続けました。

「一般的にはネガティブ思考という感覚でしょうか?しかし、自己受容を満たしていくためには、ダメだダメだと思うのではなく、その考え方も受け止めるということが必要です。

つまり、自己受容とは、ポジティブな感情もネガティブな感情も、自分の良い部分も悪い部分も全て、中立中庸な捉え方をするということです。

今の自分は過去の積み重ねですが、未来の自分は今の積み重ねです。今日からでも、未来をより明るくすることは出来ます。その鍵は、自己否定でも自己肯定でもなく、自己受容がカギとなります。

 

【自己信頼】

次に自己信頼です。自己信頼はは自己受容の上に成り立ちます。よく根拠のない自信という言葉を耳にすることがありますが、それを聴いて冗談だと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし誰でも初めてやることは成功の根拠はどこにもありません。そこで、チャレンジできるかできないかはこの自己受容が出来た上での自己信頼があるからです。根拠はないけれど、それでも今までもそうであったように自分なら最後までやり遂げることが出来るというのが根拠のない自信の本当の正体ではないかと思います。

 

【自己尊重】

そして最後に自己尊重です。これは、自分の想いや自分の時間、大切にしたいものを大切にすることです。他人を優先にするあまり、自分が大切にすることを出来ずにいたり、言えずにいることはありませんか?

まずは、自分が何を大切に思っているのか?ということをしっかりと把握、それを他人との兼ね合いの中で大切にすることです。セルフイメージの比較的整った方でも、人を大切に思う優しい方、または責任感の強い方は自分を疎かにしてしまう傾向があります。また、皆さんのように、ご自身の人生をしっかりと歩んでおられた真面目な方も注意が必要です。

 

私はこう考えます。サラリーマンの方々でうつ病を発症する方の多くは自己受容・自己信頼の欠如と自分を見失うほど働いてしまうこと。または自分の嫌なことを我慢してしまうということが原因で起こっているのではないでしょうか?つまり最終的には自己尊重の欠如は挫折の原因にもなりうるということです。

ここまで一気に話しましたが何か、ご質問はありますか?」

 

私は、そういうと講義の前に常温に戻しておいたミネラルウォーターを一口 飲み、のどを潤しました。

すると20代半ばの物腰の柔らかい男性、確かこの方は市販薬のマーケティング部にいらっしゃる田中さんだと思います。その田中さんが手を挙げてくださいました。

私は名簿を見ながら田中さんのほうに向けて、右手の手のひらを上にし「お願いします」と指名しました。

 

「自分を客観的に見ることはなかなか難しいですよね。自分は自己受容出来ているのか?自分を信頼出来ているのか?他の方と比べるとどうなのか?これを知る良い方法とかはないのでしょうか?」

 

ざっと見渡すと多くの方が一様に首を縦に振っておられます。

 

「そうですよね。コーチングというのは心の状態を取り扱うものなので、正直数的に表すということが難しい学問だと思います。しかし、私はこの講義を通じ皆さんの成長を精神論でごまかしてはいけないと常に考えています。皆さんは理系企業にお勤めの方々ですから、研究内容だけではなく、ご自身のことも定点観測を行うことがとても重要ではないでしょうか?そこで、今日はセルフイメージ自己チェックシートというものを持ってきました。25の質問にお応えいただき、自己受容・自己信頼・自己尊重の3つの項目をセルフチェックしていただこうと思っています。まずは、こちらのシートを配りますので、ご自身でチェックしてみましょう。自分によく当てはまるを5、まったく当てはまらないを1として回答し、回答したものをレーダーチャートにプロットしてみてください」

私は、ここで10分ほどのお時間をとり、ゆったりとした小さな音楽を流しました。お隣の方とシェアし合うのではなく、ご自身がご自身と向き合う時間を創るこ都に使っていただきたいと考えたからです。サラリーマンとして勤務されておられる方の多くが、このご自身と向き合う時間をお持ちになっておらず、日々の業務や周りの方々との関係性など多くの事に心配りをしておられます。このような時間を強制的にでも持つことの大切さは、私自身が痛感しておりますので、10分かからないであろう、25の質問にあえて眺めの設定とさせていただきました。

 

10分のベルが鳴り、全員が顔を上げていらっしゃいました。

 

「さて皆さん、いかがでしたでしょうか?ご自身とゆっくりと向き合い、どこが今の自分にとって必要な点なのか?ということにお気づきになられましたでしょうか?どなたか、シェアしていただいてもよろしいでしょうか?」

 

すると、セミナールームはシーンとなり、どなたからも手が上がりません。まぁそうでしょう。ご自身のセルフイメージについてお話されるのはちょっと抵抗があるという方も多いかと思います。そこでこのようにお伝えしました。

 

「ここでお話される内容は、全て正しいですし、誰も否定はしません。そして、この中でお話された内容は、セミナールームの中だけにいたしましょう。

ですので、どなたか勇気をもってシェアして下さる方に対し、話し終わったら大きな拍手を送ると共に、その話は口外しないということを皆さんで一緒に約束しませんか?」

 

これは、【安心安全の確保】という作業です。

第一話の鈴木課長とお話を始めて下際にも少し解説しております。

 

しばらくするとBクラスでひと際 真剣に聴いておられ、今まで一度も発言することのなかった静かな若い女性が小さく手を挙げました。それは先ほど自己否定をしてしまうというところで小さく手を挙げてくださった渡辺さんです。

「入社3年目で研究開発部の渡辺です。今日のお話をお伺いしていて、自分でも気が付いていたけれど改めてグラフにしてみると、自分はあまり自己受容が高くないんだなぁと痛感しました。でもこの質問の内容を読んでいると、逆にこういう考え方が出来るようになると自分を受入られるようになるのかなぁと思いました。なので、今日から少しづつここに書いてあることが5点に近づくように考えてみようと思いました。ありがとうございます」

 

すると、一斉にセミナールームの全員が大きな拍手をしました

 

少し震えているようにも見える小さめの声で発言を終えて、静かに座るころには一歩前に進めている渡辺さんの姿がありました。

「渡辺さん ありがとうございます。とても良い気付きをシェアしていただき、ありがとうございます。見渡していると同じようにうなずいておられる方も何人もいらっしゃったように思います。

そして、講義の最後に私から皆さんにシェアしたいものがあります。これは、去年同じ内容の12回のコースをお受けになられた先輩方の中で了承を頂いた方のセルフイメージチェックシートです。」

私はそういうと、以下の図をプロジェクターで投影致しました

「緑のラインは皆さんと同様に始めたばかりの時に書かれたものです。
赤いラインは1年後の卒業時点で再びトライしていただいた内容です。

これを見ると結果は明白ですよね。この講義だけではなく、講義を通じ学んだことを先ほど渡辺さんがシェアして下さったように、日々実践することと、自分と向き合い自分を大切にしたことがこの結果を産み出したのだと思います。

この結果は、この方にとって一生を変え程のるインパクトのある結果となったことと思います。私は、この方が組織の中だけではなく、ご自身の人生の中でキラキラを輝きを増し、活躍をされることが目に浮かぶような気が致します。そして次は皆さんが、今より更にステップアップする未来を創る番です。」

 

ここまで一気にお話すると、皆さんの目はもうすでに輝きが増していくのが分かりました。

そして、今までご自身に自信を持つことが出来ずに悩んでいらした渡辺さんが、今日発表されたことによりご自身の心の中に、小さな自信を齎してくれたらいいなぁと最後は渡辺さんと目を合わせ、今日の講義を終わりました。

研究肌リーダー鈴木課長のチームビルド成功への道のり No.5

このお話は大手医薬品メーカーの研究開発チームを率いる鈴木課長のお話です。

鈴木課長は外部企業でキャリアを積んだ転職組として期待のマネージャーでした。しかし蓋を開けてみると根っからの研究者肌の鈴木課長は人との関わり合いに大きなコンプレックスもあり、なかなか上手くマネジメントとしての役割を担うことが出来ないというお悩みを抱えておられました。

更に、ご自身は会社から与えられたマネージャー職よりも3度の飯より研究が好きという方で、マネジメント職への喜びや楽しみを見出すことが出来ないまま、チームを率いておられるという非常に辛い日常を送っておられました。

そんな鈴木課長と私の出会いは、私が鈴木課長の会社でコーチングコミュニケーションの年間シリーズ研修で登壇させていただいた、セミナーの初日でした。

私は2週に一度そちらの会社にお邪魔し、1回3時間程度のコーチングを生かしたチームビルドの講義を年間24回というスケジュールで行っておりました。

鈴木課長は初回の講義の後、全員が帰られ誰もいなくなったセミナールームにこっそりお戻りになり、ご自身のお悩みをお話いただいたのが初めての出会いです。

その時はマネジメント職への不満やチームメンバーとの軋轢に悩んでいらっしゃるということを、いろいろお話され最後には、ぜひメンバーの話をしっかりと聴いてみたいと元気に帰って行かれました。

それ以来、セミナー後のお時間に全員がいなくなった頃にお戻りになり、小一時間お話することが暗黙の了解となりつつあります。今日はBクラスのセミナーの日で鈴木課長の出席する日程ではありません。しかし、前回の授業の時に【尊敬】というテーマで話し合い、Bクラスの前の1時間、この【尊敬】ということについてもう少し深く考察しましょうと言うことになり、今日はそのお約束の日です。私は、ご自身でどのような結論をお考えになったのか?とても興味があり、鈴木課長がいらっしゃることを心なしか待ちわびておりました。

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詳しくは7月6日 ブログをお読みくださいませ

 

kando-kigyo-lab.hatenablog.jp

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー私は、前回 まず鈴木課長が部下の方々を尊敬することがチームビルドはたまた人間関係全般においてのスタートではないでしょうか?というお話を致しました。

その際 お話したのはナチスの迫害を受けてアメリカに渡った社会心理学者のエーリッヒ・フロムという方の【尊敬】の定義です

 

【尊敬とは】

人間の姿をありのままに見て、その人が唯一無二の存在であることを知る能力であり、その人がその人らしく成長発展していけるよう、気遣うことである

 

部下の方を尊敬するという概念を持ち合わせていなかった鈴木課長にとって、突然の話でハトが豆鉄砲を食らったというような顔をされておられましたが、最後は意を決したように両手で膝をパンと叩き、真っすぐと目を見て「分かりました!やってみます!」と力強くお話しされました。

その時点で19時を回っておりましたので、私はやってみてくださいとだけお伝えしましたが、実はこれまた難儀であることは明白でありながらも一度ご自身で頭を整理する期間が必要であろうと思いましたのでそのまま見送りました。

あれから2週間、鈴木課長は具体的にどのような行動を起こしたのでしょうか?その答えをもって、もうすぐ鈴木課長が訪れる時間です。

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「寺田さんこんにちは・・・」

少しばかり浮かない表情でセミナールームにいらした鈴木課長に、私も声のトーンを合わせるようにゆっくりと

「こんにちは」

とお伝えしました。少しの沈黙の後、鈴木課長は

「やってみましたよ?尊敬?」

と少しばつの悪そうな、おどけるような表情でボソッとお話されました。

「そうですか?いかがでしたか?」

と、次は出来るだけニュートラルな声のトーンと表情で次を促しました。

すると

「やっては見たけど、正直何をやったら良いのかが分からなかったです。だって今までは尊敬ってすごい人にすることだったと思うんです。でも先日の寺田さんのお話、えーっと・・・ドイツのえーっと・・・あっ!フロムさんのお話では誰でも、唯一無二の存在として尊敬するというようなお話でしたよね。それってすごく難しかったです。でもすごく良いお話だなぁとも思ったんで、やってみようとは思ったのですが・・・

結論、実際どうしたら良いか分からなかったんです。

凄いねぇとか声かけると気味悪がられるし・・・。お菓子とか買ってってもあれだしねぇ・・・。」

悩ましげな表情を浮かべながら、ご自身の行動の奥行の無さをすでに感じておられる表情です。そこで

「そうですか。確かに感の鋭い人ほど敏感に嘘やおべっかに反応しますよね」

私は相槌を打ちながら自分のことを思い出しておりました。

というのも恥ずかしながらも私にも同じような経験がありました。コーチングの勉強をして頭と理論では分かっていたことも実は具体的に実践出来ていなかった自分は鈴木課長と同じようにお客様との信頼関係に悩み、まさに同じことを当時のコーチに言われてやってみたけど上手くいかない・・・。そんな日を少し懐かしくも鮮明に覚えております。

そして私は反芻するようにこう伝えました。

「これは命題ですよね(*^-^*)」

あっけらかんと話す私の顔をいぶかし気に眺め

「なーんだ、今日は答えを教えてくれるわけではないんですね?」

と鈴木課長。それを受け、私はこう続けました

「答えは十人十色です。でもこの時間は尊敬を行動に落とし込むための時間にしませんか?」

すると鈴木課長の顔が少し晴れて、元気よく
「はい了解です」

とお返事されました。

私は、

「さて、まずはエーリッヒ・フロムさんの言葉を改めて読み返してみましょう」といい

尊敬とは? 

①人間の姿をありのままに見て、その人が唯一無二の存在であることを知る能力である

②その人がその人らしく成長発展していけるよう、気遣うことである

こうホワイトボードに大きくマーカーで書き込みました。すると鈴木課長はすでに何かに気が付いたように

 

「文字に書いたり、文章を分けて考える気が付くことって多いんですねぇ。

①は、ありのままに見てということは、やはり観察が必要そうですね。」

 

「そうですね。ところで鈴木課長はチームメンバーの方々の誕生日や家族構成や趣味、大切に思うことなどをどのぐらいご存知ですか?」

 

「そうですねぇ・・・。」少し考えてから 「正直あまり知らないす」

そういうと、鈴木課長は続けました。

「ありのままに見るってそういうことですか???でも言われてみるとありのままに見るにも何も知らないんじゃぁ、ただ眺めてるだけですもんねぇ」

 

そして突然何かを決意したように

「分かりました!メンバーの誕生日や家族構成 趣味など見てみます!」

 

そこで私はすかさず
「良いですね!素晴らしいと思います!ところでどうやって?」

と付け加えました。見てみますやってみますというお客様はよくいらっしゃいます。しかし、次の一歩の行動を決めておくことが何より大切です。

 

「あぁ・・・考えてなかったです。えーっと・・・。えーっと・・・。何か良い方法知ってますか?というか、寺田さんは知ってますね(笑)」

 

もちろんです。日々それを研究してます(笑)と思いながらも冷静に

「それでは、私の知っている情報を少しシェアしても良いですか?」

と了解を得たところ。。。

 

真新しい黒いリングノートの背から、渋い色の木の素材で出来たのシャープペンシルを取り出し、得意げにカチカチとあえて人差し指でノックを3回ほどされてから、ゆっくりと「お願いします!」と眉毛を上下に動かしました。

私は、そこで

「すいません。話は違うのですが素敵なノートですね。大人の上質な雰囲気がします」

と伝えました。すると鈴木課長は待ってましたとばかりに

「これねぇ。買ったんですよ。寺田さんとこうやってお話したり、毎月の研修の中から忘れちゃいけないことを書きとめようと思いまして。 

ちょっと奮発してマルマンのニーモシネです。やはり書きごこちがとっても良いんです。」

「そうでしたか。ニーモシネ私も使ってました。すごく良いですよね。黒い表紙に金色のロゴが高級感ありますし、大切なコトを書き留めておくのにシャープペンシルの滑りが良くて、なんだか嬉しくなっちゃうって言うのか。」

「分かります?こういう文房具ってなんだか気持ちが上がりますよねぇ。」

ノートの話題で盛り上がり、更に

「そのシャープペンシルも素敵ですね。なんだか握った感じの木のぬくもりとか柔らかさが伝わってきます」

そう伝えると、鈴木課長は待ってました!とばかりに

「いいでしょぉ!このシャーペンはねぇ・・・。」

鈴木課長はとっても得意気に話を区切り、そして非常に嬉しそうな表情を浮かべこう続けました

「なんと!!この間の家族旅行の時に娘たちがサプライズプレゼントしてくれたんです。

山梨のワイン蔵に寄ったんですけどね。お姉ちゃんと下の子に1000円づつ 好きなもの買っていいよってミュージアム売店で自由時間をとったんです。その時に二人で相談してその2000円とママに少し出してもらって、これをパパにって買ってくれたんですよぉ。自分たちの欲しいものを我慢してですよぉ。もう涙が出るかと思いました。いやちょっと出てたかもしれません(笑)

ワインの樽から出来てるらしいんです。もう、もらった瞬間嬉しくて、天使ですね。うちの子たちは!」

「そうでしたかぁ。それは嬉しいですねぇ。しかもおいくつのお嬢様か分かりませんが、センスがきらりと光りますね!」

「えぇ。うちの天使ちゃん達は上が12歳で下が9歳なんですけどね。下は天真爛漫でまだ泥んこ遊びとかするんですけど、上のおねぇちゃんはテレビに出たいって言うんで、ちょっとおませなお洒落さんなんですよ。同じ姉妹なのに全然違うんですよね。面白いもんですよ。

あぁっ本当に親バカで申し訳ありません。ちなみにですが、多分 学年で一番可愛いんじゃないかなぁなんて思ってます。」

最後まで言い切り満足気な顔をされておられる鈴木課長も普段は厳しい顔なのに娘さんのお話をされるとこんなデレデレの顔になるんだと思いながら、興味深くお話をお伺いしていました。

すると突然 加藤課長が前かがみになり話し始めました。

「寺田さん!!なんでそんなに相手の話を引き出せるんですか?」

と突然真面目な面持ちで問いかけてきたので、私も少しびっくりしましたが、自分の思考の癖を整理してからお伝えしました。

 「恐らくそれは、相手に対する興味ではないかと思います。私は人間の思考や行動を考え、お伝えすることをお仕事にしていますから、人一倍 人間に興味があるんです。だからこそ相手のお話をもっと聴きたいという気持ちになるのだと思います」

すると「なるほどぉ・・・」と腹落ちしたような満腹の時に出るため息のような ”なるほどぉ” を言葉にしながら、加藤課長は買ったばかりのニーモシネのノートに

2020.07.07 相手に興味を持つことからスタート

とメモを取られておりました。そして、突然思い出したかのように

「あぁ、そう言えば 先ほど寺田さんが話しかけていた、話は何ですか?何か教えてくれるって言うあれです」

と仰るので、私は
「ご自身で気が付かれたようですね。私がお話することもないかもしれません。

一つだけリクエストするとしたら、そちらのノートでも構いません。毎日 メンバーの皆さんのことで気が付かれたことはメモを取っておいてください。そしてたまに眺め、メンバー事に回数に偏りがないか?(○○さんには話しかけたけど○○さんには話しかけていないなど)をチェックし、均等にチームメンバーの方と話す時間を、1日今より20分増やす努力をしてみてくださいませんか?」

「20分ですか。それは意識しないと無理そうですね」

 

すると再びノートの2行目に

 

2020.07.07  ②今日から毎日20分いつもより多く、メンバーに興味を持って会話をする。※ノートにメモをとること

 

そう書き留めておられました。

 

【尊敬】この言葉の意味はまだまだ深い!つまり命題ですね。またこのお話をする機会が来そうですが、

今日は、一つの行動指針が決まり、次回の報告が楽しみです♪

人は行動を起こした時に変わり始めます。そのことを忘れてはいけないと思いました。

 

私には既に鈴木課長のチームが会社を引っ張る素敵なチームになっていくことが手に取るように見えてきているのですが、本人たちはそれをまだ知る由もないようです、

次回、鈴木課長がいらっしゃるのは再び2週間後です。お楽しみに

そして、今日もBクラスが間もなく始まります

研究肌リーダー鈴木課長のチームビルド成功への道のり No.4

このお話は大手医薬品メーカーの研究開発チームを率いる鈴木課長のお話です。

鈴木課長は外部企業でキャリアを積んだ転職組として期待のマネージャーでした。しかし蓋を開けてみると根っからの研究者肌の鈴木課長は人との関わり合いに大きなコンプレックスもあり、なかなか上手くマネジメントとしての役割を担うことが出来ないというお悩みを抱えておられました。更に、ご自身は会社から与えられたマネージャー職よりも3度の飯より研究が好きな方で、マネジメント職への喜びや楽しみを見出すことが出来ないまま、チームを率いておられるという非常に辛い日常を送っておられました。

そんな鈴木課長と私の出会いは、私が鈴木課長の会社でコーチングコミュニケーションの年間シリーズ研修として登壇しているセミナーの初日でした。

私は2週に一度そちらの会社にお邪魔し、1回3時間程度のコーチングを生かしたチームビルドの講義を年間24回というスケジュールで行っておりました。

鈴木課長は初回の講義の後、全員が帰られ誰もいなくなったセミナールームにこっそりお戻りになり、ご自身のお悩みをお話いただいたのが初めての出会いです。

その時はマネジメント職への不満やチームメンバーとの軋轢に悩んでいらっしゃるということを、小一時間お話していただきましたが、最後には、ぜひメンバーの話をしっかりと聴いてみたいと元気に帰って行かれました。

私はこの同様の講義を月に2回AクラスとBクラスという形で行っております。

その2週間後のBクラスに部下の佐藤さんが出席されておられ、佐藤さんからもチームの現状の課題点、そして客観的視点から鈴木課長のお話や課長に対するお悩みなどをお話いただいたのですが、これにより初めて両者の意見の食い違いが浮き彫りになりました。

それぞれの立場での意見に耳を傾けることにより見えてくる課題点をどのように生かしながら裏から鈴木課長のチームを良い報告に調整していくか?

これはコーチである私にとっても一つの挑戦になるのではないかと感じました。

佐藤さんのお話の内容は、以下のブログに記載されております。

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詳しくは7月3日 ブログをお読みくださいませ

kando-kigyo-lab.hatenablog.jp

 

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そして、更に、このお話に伴い、普段行っている【傾聴】のコツについては、こちら

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詳しくは7月4日 ブログをお読みくださいませ

 

kando-kigyo-lab.hatenablog.jp

 

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さて、今日は1か月振りに鈴木課長が参加されるAクラスです。私は講義をしながら あれからどうなったのかなぁとちょっとだけ講義後の鈴木課長とのお話を楽しみに講義を行っておりました。

Aクラスは40代50代が多く、マネジメント職をされておられる方も多くいらっしゃることから、ワイワイというよりは粛々と同じような課題を持ち、その解決方法をシェアしあいながら学びを深めておられるといった感じです。

2回目に顔を合わせる方々ばかりでしたので講義後の質問も少しづつ増えてきているように思います。

粗方 質問対応も終わりセミナールームを見渡すと、後ろの席にポツンと鈴木課長がノートを目の前に広げて眺めておりました。その姿は、復習をしているというよりは復習をする振りをしていると申しますか、やはりお話したいことがおありなようです。

私は静かに近寄り声をかけました

「鈴木課長 今日の講義はいかがでしたか?何かご質問はありましたか?」
すると、鈴木課長は、小さく「えぇ」とだけお話されて方を丸めて黙ってしまいました。

「どうされましたか???」

「あっはい。今日もとても勉強になりました。ありがとうございます。そして先月は長い間お話をお伺いいただきありがとうございます」

「いえいえ。とんでもないです。その後いかがですか?」

「はい。実は・・・。」

中肉中背で40代半ばの割にはすらりと背の高い鈴木課長が、小さく下を向き どうも言いづらいというような表情をされてなんだか、いつもと違う雰囲気でした。

少しの間 沈黙が流れ、あえて口を挟むことは避け鈴木課長が口火をきることを待ちました。

するとしばらくして、顔を上げ心なしか肩を落とした状態でこう発言されました。

「寺田さん・・・。私はやはりチームメンバーに尊敬されていないようです。」

自分の口からそうは言いたくなかったのでしょう。少し苦笑いを浮かべながら視線を下げて、そうお話されました。

「そうお感じになったんですね・・・。何故そう思われたのでしょうか?」

そう質問すると
「うーん。前回の最後に寺田さんこう伝えたことを覚えていますか?チームメンバー1人1人と話をしてみますと。」
「はい。もちろん覚えています」

「せっかく前向きになったのだから、やってみようと思い、全員と話す時間を確保して会議室に呼び出し、一人一人と話をしました」
「はい。それは勇気のいる事だったと思います。お疲れ様です。それからどうなりましたか?」

「えぇ。一様に全員が私のする質問に対して特にありませんとか・・・。考えていません・・・と口にするんです」
「なるほど・・・」

「そして、挙句の果てには もう仕事に戻っていいですか?!とか言うんですよ。なんというか悲しい気持ちになりました。仕事に対するビジョンとかないんでしょうか?なんだかもうただただ悲しいというか、メンバーにがっかりしました!それと自分にもがっかりしました」

そう吐き捨てるように話、ふぅっ!!と大きなため息をつきました。

「それから?」

私はあえて話を区切ることなく続けてもらいました。

「それから???それから・・・・・・。
それからみんなが、私が近寄ると少し警戒しているように感じます。唯一佐藤・・・。あっ佐藤という一番長い付き合いの部下がいるのですが、佐藤だけランチに誘ってくれたりして、一緒にチームの今後についてとか、私の部下との距離についてなど話しました。
なんだか、佐藤の優しさに嬉しいやら、情けないやら・・・複雑な気持ちになりました。」

心なしか目頭を赤くしながら話していただけたことにも感謝でした。

「そうでしたか。それは心の折れそうな状況をよく頑張りましたね」

私は咳を切るように流れ出た感情の流れを止めることなく、かつ流れが穏やかになるよう一旦お話を区切りました。
そして改めて、

「鈴木課長 今日の講義はいかがでしたか?」

そう尋ねました。今日は、正に「部下との真の信頼関係を気付く」という講義でしたので、まさに今の鈴木課長にピッタリのテーマだったと思います。

「すいません・・・。実は・・・この1か月のことを寺田さんに文句じゃないけど・・・。話そうと思っていて、あまり講義の内容が入ってきませんでした」

申し訳なさそうにそういう鈴木課長に、この講義はとても大切な部分だったので少々残念に思いながらも・・・。気を取り直しお話しました

「それでは私が考える部下の方々と、いや人間関係においてもっとも必要なことをお伝えしても良いですか?」

そう、お話すると、鈴木課長は突然メモの準備を始め
「ぜひお願いします!」

と身を起こしました。

「分かりました。これはあくまで私の考えですので全ての人にこうしなさいということではないですので、そういう気持ちで聞いてください。

私は、人間関係にもっとも必要なことは尊敬だと思います。」

すると、改めて肩を落とし鈴木課長はこう言いました。
「やはり尊敬ですか・・・。部下に尊敬されていないですよね。私は・・・。」

私は、そうではないことをしっかりと伝えないといけないと考え、直ぐにこう話しました。
「いえいえ。そうではなく、双方の尊敬です。」

鈴木課長は目をきょとんとしながら
「双方の尊敬ですか?」
と繰り返しました。

「えぇ。双方の尊敬です。
ところで、鈴木課長は部下の方をどのぐらい尊敬しておられますか?」

そうお尋ねすると、鈴木課長は寝耳に水とでも言わんばかりに
「僕が部下を尊敬ですか?」
と素っ頓狂な声を上げられました。

私はいたって冷静に目を真っすぐ見て
「はいそうです」
と伝えたところ、しぶしぶともとれる面持ちで、続けられました。

「正直・・・。考えた事なかったです。仕事の質も速さも私が一番ですし、部下の何を尊敬したら良いのかなんて考えたことなかったです」

今日は、私の話す機会が多いようです。一言
「今日は私の話す割合が多いですが、続けても良いですか?」
と伺ったところ、鈴木課長は一つ返事で快諾してくださいました。

そこで私は、ゆっくりと話を始めました。
「私がお伝えしたい【尊敬】とは、何かが出来るから ということではないんです。
ナチスの迫害を受けてアメリカに渡った社会心理学者のエーリッヒ・フロムは【尊敬】という言葉を次のように定義しています。」

【尊敬とは人間の姿をありのままに見て、その人が唯一無二の存在であることを知る能力であり、尊敬とはその人がその人らしく成長発展していけるよう、気遣うことである】

「そう書いてありました。このお話を受けて、鈴木課長はどう思われますか?」

頭をポリポリと掻きながら、ばつが悪そうに
「寺田さん。それは・・・とても難しいですね。それが出来たら良いとは思うのですが、なかなか自分には難しそうです。」

私も、鈴木課長と気持ちのチャンネルを合わせながら、こう伝えました
「そうですね。永遠の命題かもしれませんね。私も鈴木課長と同じで、いつも難しいなぁと思いながらも日々そこに向かっているという感じです。」

私は、話を続けました
「もしも鈴木課長がどんなに優れたマネージャーであったとしても、チームメンバーが変化する保証はどこにもないんです。
それでも一切の条件を付けることなく、尊敬の念を持ち続けることが重要なんです。それは理想のチーム像を見つけた鈴木課長以外に、最初の一歩を踏み出すことは出来ないからです」

鈴木課長は口を少し強めに結び、真っすぐと私の目を見て両手をパンと両肘に叩いて気持ちを切り替えるように、こう言いました。
「分かりました。そうですね!!やってみます!」

私も「はい!」と返事をし、腕時計を見ると19時を回っており、当たりはすっかり暗くなっていました。

そこでこのようなお約束をしました。

「もう時間も遅いですし、今日のお話はここまでにいたしましょう。私は次回Bクラス開催の為に二週間後に参ります。その日のお昼ご飯の後の時間、1時間早く参りますので、もしよろしかったら、この話の続きをしませんか?それまでに、具体的に尊敬するとはどうしたら良いのか?ということをお考えになってみてください。」

そして一つ付け加えました
「最後に一つ付け加えておきます。これからも今までも起こり得た出来事の全ては自分に真因がある。これを忘れないでください。これは鈴木課長が幸せに生きるためには絶対に必要な心構えです。鈴木課長なら、それが出来ます。」

すると鈴木課長はペロっと舌を出し
「分かりました?寺田さんのせいにしようとしたこと(笑)」
と子供のように微笑みました。

私も、それに対して鈴木さんのいたずらっ子の真似をしてアイコンタクトだけで返事を返しました。

きっと上手くいかない現状を誰かの責任にしたいと思う気持ちは誰にでもあります。
しかし、全ての出来事は自分に真因があると強く自分を持つことが全ての起点になるのではないでしょうか?

今日のお話はここまでに致しましょう。2週間後 鈴木課長の思考にどのような変化が生まれているか?それは次のお話のお楽しみに

研究肌リーダー鈴木課長のチームビルド成功への道のり No.3

対話によりご本人から解決の糸口を引出すことが出来るのか?それとも嫌悪感を抱かせてしまうのか?これはせっかくの会話の時間で大きな結果の違いが生まれてしまいます。

そこで今日はコーチは何故対話を通じ解決の糸口を引き出すことが出来るのか?今日はそんなお話をしたいと思います。

何故このお話をしようと思ったのかということですが、それは前回・前々回のブログの話の流れから来ています。

要約をいかに載せておきます。

No.1 2020.07.01

このお話の主人公は鈴木課長という、外部企業でキャリアを積んだ転職組として期待のマネージャーです。

私と鈴木課長との出会いは、私が鈴木課長の会社で登壇していたとあるセミナーからでした。

そちらの会社は研究者や技術者を多く抱える医薬品メーカーさんでした。鈴木課長も生粋の研究肌リーダーという感じの論理的であり、マネジメントより研究をしていたいというような思考の持ち主でおられます。

私は2週に一度そちらの会社にお邪魔し、1回3時間程度の講義を年間24回というスケジュールで行っておりました。

鈴木課長は初回の講義の後、全員が帰られ誰もいなくなったセミナールームにこっそりいらして、ご自身のお悩みをお話いただいたのが初めての出会いです。

その時はマネジメント職への不満やチームメンバーとの軋轢に悩んでいらっしゃるということを、小一時間お話していただきましたが、最後には、ぜひメンバーの話をしっかりと聴いてみたいと仰って元気に帰って行かれました。

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詳しくは7月1日 ブログをお読みくださいませ

kando-kigyo-lab.hatenablog.jp

 

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No.2 2020.07.03

その後、2週間後に同じ内容を講義するBクラスの開催の為に、再びそちらの企業へお邪魔しました。その際にたまたま参加されておられたのが、鈴木課長の部下でおられる佐藤さんです。

佐藤さんは、講義後に、鈴木課長が最近 夢やビジョン、仕事に対する想いなどを根掘り葉掘り聞いてきて、チームメンバーも困っているというお話を伺いました。詳しくは7月3日のブログをご覧ください

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詳しくは7月3日 ブログをお読みくださいませ

kando-kigyo-lab.hatenablog.jp


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一部 佐藤さんご本人の言葉を掲載しておきますのでご覧ください↓

「実はうちの課長が最近一人づつ会議室に呼び出して、根掘り葉掘りと聞くんですよ。今抱えている仕事の課題や、今後のビジョンとかなんとかを・・・。

これがあまり評判が良くないんです。突然 会議室に呼び出されて変な話を始めたと噂になっていまして。ただでさえ忙しいのに 何を始めてくれちゃってんだと・・・。思いました・・・」

これが佐藤さんの言い分でした。しかしゆっくりとお話をお伺いし、こんがらがってしまった糸をほぐしていくと、最後にはこう仰っていらっしゃいました。

「課長の研究についての知見は深く、本当に勉強になることばかりでもっと聞かせてほしいなぁと思っているのも事実です。だから一人で業務を抱えるのではなく、仕事を部下に上手に振っていただき、オーバーワークになりすぎずにもう少しみんなを見てくれたら嬉しいなぁと思っています。

本当はみんな課長から学ぶことは多いと思うんですだから自分はそんな課長とみんなの通訳の係を引き受けたいなぁと思っています。」

 

そうお話されてまずはランチに課長をお誘いし、距離を縮めたいという約束をして帰って行かれました。

 

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私も鈴木課長も【傾聴】という技術を活用し相手の本音を知りたいと思ったわけです。

しかし対話によりご本人から解決の糸口を引出すことが出来た結果と、それとも嫌悪感を抱かせてしまった結果とで、大きな違いが生まれてしまいました。

そこで、私が佐藤さんと行った対話のコツを一つ一つ検証し、この会でお話しようと思います。

皆さんの組織にとって、何かのお役に立つことがありましたらこの上なく幸せです。それでは、一つ一つ丁寧に説明を心掛けたいと思います。長くなりますがお付き合いいただけましたら幸いです。

私は佐藤さんとの会話の流れの中でいくつかの魔法をかけております。第2話には魔法をかけたポイントを赤字にしておきましたので、合わせてご確認いただきますようお願い致します。

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【傾聴に重要なポイント】

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f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint1 アウェイに呼び出さない

 

①お好きな椅子を一つお持ちになって、どこでも構いませんのでお座りになってお待ちいただけますか?

 

私はこのように佐藤さんにお伝えしました。これは、

私が席を指示するのではなく、こちらに来ていただくのでもなく佐藤さんの話やすい場所を選んでいただくためにこのようにお伝えしたのです。

人は、アウェイな場所に呼び出されるとそれだけで緊張し本音を隠します。従って、相手の本音を聴きたいと思うのであれば、相手が安心してお話していただける環境に自分が出向くのがベストです。会社でよくあるパターンとして、上司が部下を自分のデスク周りに呼び出すことがありますが、歩いている一歩一歩で緊張を高めて上司の所に向かっていると思っても過言ではありません。

鈴木課長のように会議室でお話する必要がある場合には、先に部下の方を通して、自分が後から入り、好きな席を選んでいただく方がベストかもしれません。

とにもかくにも、相手がリラックスできる環境を整えてあげることに最大限の気を使ってあげる事からが傾聴のスタートです

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint2 パーソナルスペースの確保

 

②佐藤さんが話やすい位置に椅子を置きたいと思うのですが、どこが良いですか?

 

私は、自分の椅子を持っていき、佐藤さんに私が座る位置を選んでいただきました。

これは、佐藤さんのパーソナルスペースの確保をも目的にしています。

パーソナルスペース(Peasonal space)とは、他者が自分に近づくことを許せる限界の範囲、つまり心理的な縄張りのことです。

このパーソナルスペースとは男女によっても違いますが、関係性が大きく影響を及ぼします。例えば、自分のご家族では体が密着するような近さでも気にもなりませんが、会社の人がそんな近くにいたら非常に気持ちが悪いですよね。

今の自分と相手の心の距離を相手に判断して席を決めてもらうことで、相手に会話の主導権をお渡しすることが出来ます。

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint3 態度は体で表す

 

③私は心持ち状態を前に倒し・・・

 

これは、佐藤さんのお話をしっかりと聴かせてくださいという態度を体で表したものです。よく目にする会社の会議で、背もたれに尾骨から背骨の全部をつけて、手と首だけ前に出した状態でパソコン画面を眺めながら話を聞いている方はいらっしゃいませんか?あるいは全員そうだという会社さんもおられるかもしれません。

これでは発言者はやる気が出ませんよね。適当な報告をしてやり過ごそうと思うのが関の山です。傾聴で大切なことは相手がしっかりと自分の話を聴いてくれているという感覚です。従って、状態はしっかりとたてて、気持ち前傾ぐらいがちょうど良いのです。実は他にも沢山のアクションがあるのですが、それは追々お話していくとして、「態度は体で表す」ぜひ試していただきたいポイントです。

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint4 安心安全の場の確保

 

セミナールームには誰もいませんし、これだけ扉から遠ければ声も聞こえないでしょう。ましてや私は誰にもお伝えしませんので、安心してください。

 

これは、「安心安全の場の確保」という作業です。ここでお話した内容は誰にも口外しないので安心して下さいと伝えることで改めて自由に話して良いのだという気持ちが生まれる効果があります。

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint5 自己開示

 

⑤誰だってもちろん私だってそう思うことはありますので、

 佐藤さんのお気持ちよく理解できます。

 

これは、聴き手側(コーチ)が自分の弱みや失敗を、話し手側にあえてお話することで、なんだ、寺田さんもそうなら自分の思っている悪口も安心して話してもOKだと思っていただく効果があります。

また、これにより、先ほどの「安心安全の場」は更に強化されます。

この場所では何を話しても否定も非難もされることはない。全て正解だし、受け入れられるという気持ちが持てることで初めて自分の本音を話すことが出来るようになります。

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint6 自分の意見を言う際は相手の了解を得る

 

⑥佐藤さん、私がお話をお伺いしていて感じたことをお話しても良いですか?

 

私は、この時間はあくまで話し手側の時間であると自分自身が認識し話を聴くというマインドセットを忘れないためにもこのように聴いています。また主観や固定観念を押し付けてしまわないように注意する意識にも繋がります。

そして話し手側にもそのように意識してもらえるように、話を挟む時は、了解を得ましょう

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint7 相手と自分の思考を合わせる

 

⑦佐藤さんが私にお声がけいただいた本当の理由は、・・・・これで合っていますか?

 

自分が勝手に相手の思考を理解した気になりアドバイスをしたりしてしまう場合ってありませんか?これを避けるためにも、話の本質に達してきた時点で一度自分が感じたことを相手に話し、確認を取る作業が必要です。これにより本当に話したい内容を話せる時間に使っていただくことができます。

闇雲に時間が過ぎ、本当はこの話をしたかったんじゃないんだよねぇと言われたときのショックと言ったらないです。ちなみに私にはそういう経験が何度もあります・・・(*^-^*)

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint8 

    本質に達したと思った時点でアドバイスしない

 

⑧それではもう少しお話続けていただけますか?

 

話している方が話の本質に達した時点で、「あぁそれならこうしたら良いよ」とアドバイスをしたくなってしまう気持ちは、一度グッと抑えましょう。経験値の高い上司の方や年上の方こそつい良かれと思ってやってしまいがちなのですが、もう一段深い話を聴きとるためにもここはグッと我慢しましょう

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint9 相手の心と共鳴する

 

⑨同じベンチに座り同じ景色を見ているような感覚を感じながらそっと息遣いを合わせました

 

ここには二つの効果が入っています。

一つ目はビジュアライゼーションです。同じベンチの隣で同じ景色を見ているように相手の心のイメージと焦点を合わせていく作業を言います。人は十人十色です。考え方、生き方、環境など全てが違います。従って自分の視点で物事を判断し正しい正しくないと評価してしまうことにより、相手が心を閉ざしてしまったとしたら突然話を辞めてしまうことになります。コーチングの最も重要なポイントは沢山話をしてもらうことで、口から出た言葉が耳に入り、客観や俯瞰をしながらご自身で課題の解決へ導くことです。従って、お話をしていただけない状況が起こったのであればそれは、命とりです。とはいうものの、私も沢山の失敗経験を繰り返したことを今でも苦い思い出としていくつも持っています(*^-^*)

二つ目はペイシングです。これは相手と心のチャンネルを合わせていくために行う息遣いです。相手の話のペースや肩の息遣いを見ながら相手と自分の呼吸の速度やタイミングをそっと合わせていく作業です。

これにより相手はより安心して話やすい環境を作ることが出来ます

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint10 言葉にならない声を聴く

 

⑩かれこれ30分ほど佐藤さんはお話した後、ふうぅっと長い息を吐きながら・・・

 

これは相手の心の中に溜まっていた不満が吐き出され思考が転換した瞬間の合図です。人は、言葉にならない声を沢山の体で表しています。例えば、頭をかくしぐさ、身振り手振りが大きくなる時、ため息一つとっても「はぁ!!」と強く早く吐く時と 「はぁ~」と弱く吐く時では怒りと喜びほどの違いがありますよね。そのサインを見逃すことなく話の展開の変化を感じ取ることが出来たとしたら、言葉に頼らないコミュニケーションへとジャンプアップすることが出来ます。人は言葉で嘘をつく生き物です。これは私も含めてそうです。従って相手の真意を見落とすことがないようにしたいものですね

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint11 プラスの意識に転換する質問

 

⑫本当だったらチームがどんな状態だったら気持ちよく仕事が出来そうですか?

 

傾聴のゴールはカウンセラーさんとコーチではまた違うのですが、コーチングの場合には、プラスの未来を描ける行動が決定するところにゴール設定をすると傾聴時間をデザインしやすくなります。

そのためには、まず心の中にある不満や不安などなどの諸々の感情を全て吐き出していただく必要があるのですが、ずっとマイナスの意識で終わっていただいては相手にとっても良い時間と言えないのではないでしょうか?そこで、私がしたことは、ポイント10で話の転換期を迎えていることを察知した後に、


「本当だったらどうなっていたい?」という質問をしました。

この質問の答えにマイナスの答えが出る可能性は非常に少ないです。従って、未来のプラスの答えを引き出しやすいという特徴があります。

ここで、マイナスな未来が出てきた場合にはその感情を一旦受け入れて戦略を練り直しましょう。まだ信頼関係が出来ていない可能性もありますので、強情な奴め!!などと思わず、改めて同じ景色を同じベンチに座って眺めることが出来ているのか?自分の心に問い直してみてください

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint12 視線の動きに注意

 

⑫佐藤さんはゆっくりと左上に視線を動かしながら・・・

 

人の視線の動きは脳の反応と結びついています。従って考えていることにより視線が動きます。目は口ほどにものを言うというのはこの言葉から来ているのかもしれません。心理学用語ではアイ・パターンという言葉で表されますが、この中で左上に視線が向いている時は未来の、まだたどり着いたことのないイメージを思い出している可能性があるとのことです。このアイ・パターンについてはまた、どこかのタイミングでお話をしたいと思うのですが、目は口ほどにものを言うということはぜひ覚えておいていただき、相手の目の動きを見逃さずに会話を進めていただけたらと思います。

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint13 7秒の沈黙ルール

 

⑬佐藤さんは7秒ほどの沈黙を経て、ゆっくりと話し始めました

 

佐藤さんは左上に視線を動かしながらしばらくの間沈黙されておられました。その沈黙の時間は7秒ほどです。私はこの7秒間をとても大切にしています。何かを考えている時に人は沈黙しますが、つい沈黙が怖くて次の質問をしてしまったり、自分の経験や見解を伝えてしまったことはありませんか?

沈黙はシンキングタイムです。ここに割って入らないことがとても大切です。とくに話し手側にとってじっくり考えたい場面はより沈黙は長くなります。

私の場合はゆっくりと7つ数えて(ということは7秒以上ですね(笑))、それでも迷っているときは改めて次のように訊ねます。

「答えは今、見つかりそうにありませんか?」「質問を変えたほうが良いですか?」などです。

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint14 背中を押す

 

⑭それはとても良いことですね。佐藤さんでしたら、一番課長と長くお付き合いしているということでしたし、他のメンバーの方との調整係としての力を発揮しそうですね

 

相手の考えに同意すると共に、そっと背中を押す言葉を伝えます。この際に注意する点は、相手のお話から見つけた、根拠を一緒に添えて差し上げることです。

闇雲に「○○さんなら大丈夫大丈夫!」と言われるより、説得力が増しますし、あなただからこそきっと出来ると伝える事ができます。

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint15 具体的な行動に落とし込む

 

⑮具体的にもう既に思いついている行動って何かありますか?

 

せっかくのお話は、直ぐに忘れてしまいます。行動が起きなければ何の意味もありません。「今日のお話良かったね」で終わらないためにも、小さな行動のコミットを自然にしていただけるように促していきます。

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint16 次回報告の約束をする

 

⑯いいですね!ぜひまたご報告してください

 

次回またコーチに報告することが楽しみになっていただけるように、小さな約束を取り交わして終わりにしていきます。

これにより、「寺田さんに報告しないといけないし・・・」という一種の強制力が働きます。決めた行動をやってみようという気持ちになっていただけたら幸いだなぁと思っています。

人が変わるポイントは行動を起こす時です。私が思うコーチングの最終ゴールはその方とその方を取り巻く人々の人生が好転することです。従って、少しでも行動を起こしすぞという気持ちになっていただけることがとても重要だと思っています。

 

f:id:kando-kigyo-lab:20200704165308p:plainPoint17 シームレスであることそして・・・

 

そして最後となりましたが、会話を通じて全ての共通点について二つほどお話します。

 

まずは一つ目はシームレスであること。シームレスとは、縫い目がないという意味です。一連の【傾聴】スキルを普通の会話の中で、空気が流れるように、行うことが出来る状態をシームレスと言います。この域に達するには沢山の方の話を聴く時間を持つこと以外にはないのかもしれません。

そして・・・二つ目はこの沢山のお話を聴かせていただく自分とは?ということですが、

これを実現する為に最も必要な心構えは、

恐らく相手の話に興味を持ち耳を傾けるということなのだと思います。

つまり聴き手側の人間性を高め続ける事が話し手側の安心感につながるのではないかと考えています。

最後の項目を含め私も日々修行の身です。何度も失敗と検証を繰り返しながら皆さんと共に成長していけたらと思っております。

これらの知識や心構えが皆さんの組織の成長に少しでもお役に立つことがあれば幸いです。

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さて、次回はとうとうAクラスに所属の鈴木課長が講義に参加してくださいます。どんなお話をしてくださるか、とても楽しみですね。

鈴木課長が皆さんと共に成長しながらチームを活性化していく未来が私にはもう見えているのですが、

皆さんはどうでしょうか?またお会い出来ますことを楽しみにしております

研究肌リーダー鈴木課長のチームビルド成功への道のり No.2

鈴木課長は、外部企業でキャリアを積んだ転職組として期待のマネージャーでした。

私と鈴木課長との出会いは、私がその会社で登壇していたとあるセミナーからでした

私は2週に一度そちらの会社にお邪魔し、1回3時間程度の講義を年間24回というスケジュールで行っておりました。

初回の講義の後、全員が帰られ誰もいなくなったセミナールームにこっそりいらしていただき、ご自身のお悩みをお話いただいたのが初めての出会いです。

前回は、マネジメント職への不満やチームメンバーとの軋轢に悩んでいらっしゃるということを、小一時間お話していただき ぜひメンバーの話をしっかりと聴いてみたいと仰って元気に帰って行かれました。

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詳しくは7月1日 ブログをお読みくださいませ

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kando-kigyo-lab.hatenablog.jp

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あれから2週間、どうなってるかなぁと思いながらも、私の講義は1月に同じ内容を2回行い、AクラスBクラスと別れ講義を行っています。そのため、Aクラスの鈴木課長と再びお会いするのは1月後・・・。少し気にかかりながらも今日はBクラスの講義を無事に終えることが出来ました。Bクラスは20代30代の若い方が多く、Aクラスに比べてワイワイガヤガヤと、とても活気あふれる講義となりました。

活気のある講義は私も大好きです。講師もとても楽しい気持ちになります。

講義も無事終了を迎え、終了後も沢山の質問が飛び交い、ホワイトボードの周りに沢山の若手社員さんが集まりました。

粗方質問に答え終わる頃を見計らって、受講生さんの一人が私の方へ静々とやってきました。そして、

「寺田さんちょっといいですか?」

遠慮がちに私に話しかけていらっしゃいました。

「もちろんです。どうしました?」

私がそういうと、その方が世間話を始められました。

「商品開発部の佐藤です。今日はありがとうございました。ここ最近 部内でちょっと変わったことがあり、それって今日習ったことと通じているのかなぁと思いまして。

今日のお話の中で【傾聴】というお話が出ていたかと思うのですが、ここ最近部署の課長がすごくいろいろ聞いてくるんです。仕事に対する想いとか、大切にしているものとかなどなどです。忙しいのにこう言ったら何だけど、少しうざったいなぁと思うのですが、それって、この講義の影響なんでしょうか?

いや、寺田さんの講義はとても勉強になったのですが、正直 なんと言いますか…。

上司の突然の変容振りについていけないって言うのかなぁ・・・。何とも言えないのですけどすいません」

最後はお茶を濁すようにその方は、口を閉ざしました。私の中で、あぁこれは鈴木課長の部下の方だなと直感しましたが、あえて訊かないことにし、話を詳しく聴いてみることにしました。

「そうだったんですね。もし良かったらお座りになって話しませんか?少しだけホワイトボードを片付けてその後でも良いでしょうか?」

そう声をかけました。すると佐藤さんは

「あっすいません・・・。いいんですか?」

と遠慮というよりは、長くなったら嫌だなぁ・・・・。こんな展開になるとは・・・。ちょっと後悔とでも言わんばかりの表情を浮かべながらも承諾してくださいました。

私もお礼を言い、

「急いで片付けますので、お好きな椅子を一つお持ちになって、どこでも構いませんのでお座りになってお待ちいただけますか?

と声をかけました。

佐藤さんはセミナールームのドアから一番遠い位置にご自身の椅子を置き、今日のノートを整理されておられました。

5分ほどで急いで片づけをし、佐藤さんのもとへ自分で椅子を一つ持っていき、このようにお声がけします

「お待たせしました。佐藤さんが話やすい位置に椅子を置きたいと思うのですが、どこが良いですか?

突然、そんなことを訊かれて ちょっと戸惑ったという雰囲気でしたが、「じゃぁこちらで」と指示された部分に椅子を置いて静かに腰を掛けました。

「それでは、早速 先ほどのお話の続きを少しお聞かせいただけますか?」

そう言って、私は気持ち状態を前に倒し、じっくりと佐藤さんのお話をお聞きすることとしました。

「はい。実はうちの課長が最近一人づつ呼び出して、根掘り葉掘りと聞くんですよ。今抱えている仕事の課題や、今後のビジョンとかなんとかを・・・。

これがあまり評判が良くないんです。突然 会議室に呼び出されて変な話を始めたと噂になっていまして。ただでさえ忙しいのに 何始めてくれちゃってんだと・・・。思いました。これって寺田さんの講義の影響でしょうか?

あっ!すいません。言葉が過ぎました!いや、講義自体はとても勉強になったのですがすいません」

ついいろいろ思っていらしたことを話したくなってしまったのでしょう。佐藤さんはご自身がどう見られているのか?と突然我に返ったようにお話を区切りました。

「いえいえ。大丈夫ですよ。もうセミナールームには誰もいませんし、これだけ扉から遠ければ声も聞こえないでしょうし、ましてや私は誰にもお伝えしませんので、安心してください。それに何より、誰だってそう思うことはありますので、佐藤さんのお気持ちよく理解できます。どうぞ続けてください」

少し安心したような表情を浮かべ、佐藤さんは話を進めました。

「もちろん、いつも人一倍頑張っている課長のことを認めていないわけではないです。むしろ尊敬もしています。でも兎角コミュニケーションについては・・・。うーんという感じでして・・・。いい人なんですけど。

部下のメンバーの中では僕が一番社歴も長いですし、課長との付き合いも長いですから、上手に調整しないといけないと思うのですがどうしたら良いものかと思っています。」

「そうでしたか、いろいろご苦労もなさっていらっしゃるんですね。」

「苦労というか、何とかしてあげたいと思う気持ちもあるんですが、自分もそういう課長の態度にイライラしてしまう所もありまして・・・。どうしたもんですかね」

私は、佐藤さんが私の所にいらっしゃったのは、本当ははこれが話したかったんだなぁと確信し、確認のために問いかけました

佐藤さん、私がお話をお伺いしていて感じたことをお話しても良いですか?

このようにお伺いすると佐藤さんは、「えぇもちろんです。」と小さくうなずいてくださいました。そこで私は次のように続けました。

「佐藤さんが私にお声がけいただいた本当の理由は、課長とメンバーを上手に取り持ってあげたいのだけれども、ご自身でもどうしたら良いか分からないというお話のように聴こえたのですが、合っていますか?これはあくまで私の見解ですので、違ったらぜひ言ってくださいね

すると今度は大きくうなずき

「ぇぇそうなんです!まぁ100%そんな高尚な感じではないですが、何かしてあげたいような気持もあります。」

とお返事をして下さいました。

そうでしたか。それではもう少しお話続けていただけますか?

「はい。課長は研究者出身なので、とても真面目な方です。普段から話しかけないでくれオーラを放ちながら一人で黙々と仕事しています。そんな課長のことをみんなは少し敬遠しているように感じます。原因はなにより話を聴いてくれないし、分からないことなどあっても話しかけると怖い顔をするので、話しかけづらいので、出来る限り自分でやるしかないと思っているのだけど、失敗すると小さくため息をつかれたりすると、もうみんな聞きたくなくなっちゃうという感じです。」

「そうでしたか。それは辛いですね。それから?

私は、佐藤さんの横に座り同じ景色を見ているような感覚を感じながらそっと息遣いを合わせました
かれこれ30分ほど佐藤さんはお話した後、ふうぅっと長い息を吐きながらこのようにお話されました。

「もしかしたら本人も気が付いているんだろうなぁ・・・。だから突然呼び出して突然コミュニケーションをとりたくなったのかな。課長もいろいろ苦労してるんだなぁ・・・」

「そうでしたか。それはあるかもしれませんねぇ」

私も少し長めにゆっくりと相槌を打つようにそう言いました。そして、このように質問しました。

「ところで、佐藤さんは本当だったらチームがどんな状態だったら気持ちよく成果を上げられるチームになりそうだと思いますか?

再び佐藤さんはゆっくりと左上に視線を動かしながら

そうですねぇと返事をし、うーんと言いながら沈黙しました。

そして7秒ほどの沈黙の後、ゆっくりと話し始めました

「課長の研究についての知見は深く、本当に勉強になることばかりでもっと聞かせてほしいなぁと思っています。だから一人で業務を抱えるのではなく、仕事を部下に上手に振っていただき、オーバーワークになりすぎずにもう少しみんなを見てくれたら嬉しいなぁと思っています。

本当はみんな課長から学ぶことは多いと思うんです」

そうお話された佐藤さんの顔に、最初にいらした時のいぶかし気な雰囲気はなくなっていました。

私は更に相槌を打ちました

「そうですか。それは素晴らしい課長をお持ちでいらっしゃいますね。」

するとそうとも言い切れないという顔をしながらも少し照れくさそうに佐藤さんは小さく頷きながら続けました。

「うーん。。。そうかも知れませんね。だから自分はそんな課長とみんなの通訳の係を引き受けてあげたいなぁと思っています。」

佐藤さんは顔を真っすぐ上げて私にこう言ってくださいました。

私も後押しするように、

「そうでしたか、それはとても良いことですねぇ。

佐藤さんでしたら、一番課長と長くお付き合いしているということでしたし、他のメンバーの方との調整係としての力を発揮しそうですね。

ところで具体的にもう既に思いつく行動って何かありますか?」

私は最後に今日の素晴らしい対話をチームの力に変えてほしいという想いを込めて、一つだけ行動を出していただくこととしました。

すると佐藤さんはうーんとそうですねぇと少し考え

「まずは自分も課長にもう少し歩み寄るためにもランチに誘ってみます」

そう明るい声でお話してくださいました。

「いいですね!ぜひまたご報告してください

と私の方からお話すると佐藤さんは元気にセミナールームからお帰りになりました。鈴木課長のチームのチームワークがよくなるには日進月歩のようです。

しかし、確実に鈴木課長が行った行動が周りにも水の波紋を広げているのだと思いました。

今日のお話はこのあたりにいたしましょう

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→さて、聴くという作業は鈴木課長も私も同じでしたが、私が話の真因に達することが出来たのは、何故でしょうか?

ヒントは赤字の部分です。またこれについては次回解説いたします

研究肌リーダー鈴木課長のチームビルド成功への道のり No.1

鈴木課長は、外部企業でキャリアを積んだ転職組として期待のマネージャーでした。

私と鈴木課長との出会いは、私がその会社で登壇していたとあるセミナーでした。

セミナーが終わり、片付けをしていると鈴木課長は一度セミナールームから帰って行かれたにも関わらず、再び戻っていらっしゃいました。

静かなセミナールームで私は忘れ物でもしたのかなぁと思い 「どうされました?忘れ物ですか?」

そう伺いました。

「いえ・・・。忘れ物ではないのですが・・・・」

少し間を置き、鈴木課長は再び話し始めました

「寺田さん、今日はとても勉強になりました。

少しご相談に乗っていただきたいことがあるのですがお時間よろしいですか?・・・」

時刻は18時半すぎ 就業時間を過ぎているのに熱心な方だなぁと思いながら、その瞳の奥に本当は質問に来るなんて柄でもないけれど、どうしても聞いてみたいことがあるから、仕方なくというのもなんだが、ぜひ話してみたい。見解を聞きたいというような意思を感じ、じっくりお話をお伺いすることにしました。

「もし良かったら、どうぞそこにお座りになってお話しませんか?」

私は夕暮れ時の椅子を半円型に広げたセミナールームの椅子を一つ取り、鈴木課長を促し、鈴木課長とハの字の位置の椅子に座りじっくりと話を聴くこととしました。

 

「何かありましたか?」

「はい・・・。実はチームメンバーとの関係性に悩んでいます」

「関係性ですか。というと?」

「えぇ・・・。」

少し話ずらそうな様子で5秒ほどの沈黙が流れたのち、鈴木課長は下を向いたままゆっくりと話し始めました。

「自分は外部の企業から中途で入社しました。正直、マネジメント職に自分がなることを考えて入社したというよりは、伸び伸びとした環境で自分の好きな研究を思いっきりしたい。研究で自分の実力を試したい!そういう想いで入社しました。

しかし、蓋を開けてみると、会社はもともと中堅のマネージャーを取りたいと思っていたのだと思います。入社1年もしない間にマネージャーに抜擢されてしまいまして・・・。」

もし、私が鈴木課長の立場だとしたら出世したのだから嬉しいと思い、素晴らしいですね!と言ってしまいそうなところですが、私の固定観念は心にぐっと抑え短い相槌を打ちました。

「そうでしたか。それでどうなりました?」

「はい。自分の仕事に集中できないストレスが溜まり、さらには上司から無理難題を押し付けられたりすることもあり、部下に話しかけられるとつい嫌な顔をしてしまうようになりました。今となっては、部下が誰も自分に相談を持ち掛けなくなりました。これじゃぁまずいなぁと思っていたらとうとう退職者があらわれてしまい、チームは纏まらないし、成果は上がらないし、どうして良いか分からずに、なにも出来ないまま今日に至ります」

「そうですか。それは辛かったですねぇ」

「はい。感情を隠さず表情に出してしまうなんて、社会人として、ましてやマネージャーとして失格だと思います」

「そんな風にお感じになられたんですね」

鈴木課長は、溢れた感情をこぶしの中に握り締め、苦虫を噛み潰すように力なく小さな声で

「はい・・・」

とだけ返事をされました。そこで私は、まずこんな言葉をかけてみました。

「お話いただきありがとうございます。ここ数か月 一人で抱えていらしたんですね。本当によく努力をなさいましたね。」

すると、鈴木課長がふっと顔を上げ、初めて私と目が合いました。私はうなずく代わりに、ゆっくりと小さく瞬きをしました。それを見て少し安心されたのか、再び首を落とし話を続けました。

「仕事ばかりが増えて、人の面倒まで見ないといけないし、疲労困憊です。自分はこんなことがしたかったんじゃない。ただ大好きな研究に没頭出来たら、それだけで良かったんです。それがやりたくてこの会社に入ってきたんです。

なのに自分で考えられることまでも質問してきて、伝えたことも伝わらないし、メモを取らないからすぐに忘れるし、期日を守らないし、期日に間に合っても穴だらけで、正直・・・こっちも限界だったんですよ!」

鈴木課長は咳を切ったかのように日ごろの感情を打ち明けてくださいました。

私はただただ言葉が止まるまで、10分ほど短い相槌を打ちながら鈴木課長の苦悩を聴き続けました。そして粗方話が終わったことを見計らい以下の質問をしました

「ところで、○○さんのされておられる研究ってどんなことに役に立つんですか?」

一瞬「えっ?」という表情を浮かべながらも鈴木課長は、世の中に出ることがあったらこんなことに役に立ち、生活がどうなるかを一生懸命お話してくださいました。そして最後に、

「本当だったら一人で出来ないことはわかっているんです。みんなの力が必要なことは・・・。」

そう一言お話されました。

「そうですか。よく分かりました。とても素晴らしい研究ですね。その商品が世の中に出たとしたら、ずいぶんと助かる方が多く、仕事も楽になりますね」

「はい!そうなんです。だからこのチームに所属出来たことを本当に良かったと思っています」

「そうだったんですね。それではお伺いしたいのですがよろしいですか?」

※私は、聞きたいことがある時に、相手の了解を得ることを心掛けています。

鈴木課長の顔は既に上がっており、私の目をしっかりと見て

「どうぞ」

と手を添えながら、一言仰いました。私は鈴木課長の人に対する丁寧さに感服しながらも話を進めました。

「○○さんは、本当だったらチームがどうなっていたら良いと思いますか?」

私の質問に一瞬考え、そして楽し気に右上を仰ぎながら、そして小さく満足げな息を吐き

「そりゃぁ、チームで一丸となって世の中にこの商品を出せたら良いですね」

私は「そうですか。それから?」と促しました

「世の中に出た暁には、美味しいお酒をみんなと飲めたら良いですね」

「いいですねぇ。他にはありますか?」このやり取りを何度か繰り返した後に、突然鈴木課長は、

「そうだよねぇ」と小さな声を上げました。「どうしました?」と私が促すと

「この商品を世の中に出すためには一人では無理なんですね。仲間の力を借りないと無理なのだとしたら、仲間と連携を取りそれぞれの役割を果たす必要があるんですね。」

そこまで話して、鈴木課長は一息ついて少し不安そうにこう続けました

「そして、私の役割はみんなの仕事を円滑にするということなんでしょう・・・」

まだ、少し不安そうな表情を浮かべる鈴木課長に、私は最後にこう伝えました。

「○○さんはお話の中で今のお仕事の目的に目を向けられたからこそ、小さな世界から思考が一気に殻を破ったんですね。お話をお伺いしている際に、私との丁寧いな受け答えが本当の○○さんだと思います。その様子でメンバーの方々ともお話されてみてはいかがでしょうか?きっと少しずつ氷が解けるように皆さんの心が解けて行かれると思いますよ。」

すると鈴木課長は 「傾聴って本当に大切ですね。ここに来た時は周りがどうして思い通りに動いてくれないんだと思っていました。今は、仲間と共に商品を世の中に出すために、自分は何が出来るか?というように思っています。僕も、メンバーの今の想いに丁寧に耳を傾けることからやってみようと思います。ありがとうございます。」

そう言って、最初より少しだけ軽い足取りでセミナールームを後にされました

こぎ出していく船を見送る気持ちで鈴木課長が帰っていく後ろ姿を見送りました。

 

このお話はまだ先に続きます→No2へ

 
さて、何故この方が私にご自身のお話をしてくださったか、あなたは分かりますか?

そのことについてのヒントを以下にまとめておきます

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傾聴の大切さ

このお話の中で、私はほとんどお話をすることはなかったのにも関わらず、鈴木課長はご自身で答えを導き出し少し来た時よりも軽い気持ちでお帰りになりました。

これが正に傾聴の力です。ただただ主観を加える事なく相手のお話を聴くことの大切さと、その効果はコーチである私は肌身で感じています。

そこに必要な質問を置いていくというような感覚でしょうか?

ぜひ、皆さんにお試しいただきたいのは

 

✓メンバーのお話を固定観念を持たず聴くこと

✓お話する時間をお相手の方の時間だと思って話を聴く

 

目的の大切さ

今回のお悩みは正に目的に気が付いてからのご本人の気付きがとても大きかったように思います。そして、何より全ての周りで起こっている出来事は自分が起点で起こっているということ。

企業で働いておられる方は、とかく自分が働いている意義を見失いがちです。大きな組織の中で自分が小さな歯車となり、その周りの状況が見えなくなってしまうのです。

重要なことはこの目標は何故達成しなくてはならないのか?その目的とは何か?

ということです。これは経営理念とも通ずるものがありますが、この目的が優秀であり、人として素晴らしい社員の方々の心にしっかりと響くものであるか?ということは経営者として、企業として常に模索し続けなくてはならない大切な部分ではないかと私は考えます。

 

部下を怒鳴る上司を、どう育てるか

皆さんおはようございます。
専門職企業のためのコミュニケーションコーチ 寺田麻子です。

 

さて今日のお話は、

【頭ごなしに部下を怒鳴る上司を、経営者はどう育てるべきか?】Vol1

というテーマでお話いたします。

 

せっかく若手の社員の個性を大切に育てていきたいと思っているのに

「だからお前はダメなんだよ!」

「そんなことは自分の頭で考えろ!」

「なんでそんなこともまともに出来ないんだ」
「こんなことも出来ないなら辞めちまえ」
と大きな声で伝える上司に、どんどんと小さくなっていく若手社員の姿に

内心 いつ「辞める」と言い出すのではないかとヒヤヒヤしながらも、

その上司は仕事も出来るので、そちらに辞められても困ると
胃に穴が開きそうになりながらも、どうしたら良いのかと考えあぐねてしまう場面は
在りませんでしょうか?

 

まずは、なぜ?

こういった状況では力を発揮できない状態が起こるのか?という心理的なことからお話していきます。

マズローの5段階欲求というお話をお耳にしたことがあるかと思います。

少しだけ復習を兼ねてお話いたします。
1963年マズローさんが提唱した心理学です。

「人間は自己実現に向けて絶えず成長し続ける」という仮説をもとに作られた理論です。
このマズローの5段階欲求では
人間の尊厳と成長についての5ステップに分けて説明されています。

 

1ステップ(もっとも基礎となる部分)

生 理 的欲求・・・生命維持に関わる欲求(食欲・睡眠欲・排泄欲・性欲等)

 

2ステップ(まだまだ生命維持の土台となる大切な欲求)

安心安全の欲求・・・身の安全・身分の安全・不安や混乱からの解放等

 

3ステップ(やっと個人としての欲求から人間本来の群れを成す欲求へ)

所属と愛の欲求・・・孤独や追放された状態を避ける・共同体の一員に加わりたい等

 

4ステップ(尊厳の欲求・自尊の欲求)

承 認 の欲求・・・実は二つの欲求に分かれています。

  1. 自分の自分に対する評価の欲求(自尊心)達成・能力・自由・強さ・自由など
  2. 他者から受ける評価に対する欲求(尊厳)評判・信頼・地位・名誉・優越

これらが満たされない状態が起こると、焦燥感や劣等感、無力感、無価値観へと繋がっていきます。

 

5ステップ(ここを目指して欲求を積み上げていく)

自己実現の欲求・・・誰でもない自分の能力を開花させる状態

つまり個性を活かしあえる組織とは個人がこの状態になっていることが必須の

条件ということです。

 

これはあくまで私の主観ではありますが、私は実は6段目があるように感じています。

その6段目とは

 

6ステップ(人のために行動する)

他己実現の欲求・・・他者の成長や成功に対しサポートする気持ち

 

以上がマズローの5段階欲求+1(寺田バージョン)です。

 

さて話を元に戻しますが、

「だからお前はダメなんだよ!」

「そんなことは自分の頭で考えろ!」

「なんでそんなこともまともに出来ないんだ」
「こんなことも出来ないなら辞めちまえ」

 

と日々言われ続けた部下はこの5ステップのどこが満たされない状態になると思われますか?

 

これは「安全安心の欲求」が揺らぐという大変な事態です。

これでは会社に集う人々の個性が生きる企業文化を創ることは難しいのは明白ですよね。

そこでまずはやらなくてはならないことは、
部下を頭ごなしに怒鳴る上司の成長を促さない限り、企業の成長は難しいということです。

そしてその成長を促すことが出来るのは経営者であるあなた以外にいないということです。

さて、それではどのように育てていくのがベストなのでしょうか?

 

それについては、次回ゆっくりお話いたします